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椅子ヨガの思い出

2026.4.1

ある大規模なデイサービスで、月に2回ほどボランティアで椅子ヨガをやっていたことがあります。

今回は、そのときの思い出を書いてみようと思いました。

2年間の椅子ヨガのボランティア活動の中で、たくさんの方と出会うことができました。

その中で「もう一度会って、お礼を言いたいな」と思う方がいます。

名前も知らない方なのですが、心折れそうになった私を勇気づけてくれた方でした。

そのボランティアをしていた頃、私は平日は派遣社員として働いていたので、月に2回(土曜日の朝)大規模なデイサービス施設をひとりで訪問していました。

200人近くの高齢者、車いす使用者の方が通う大規模な施設でしたが、参加者全員が楽しめる椅子ヨガにしたいと思い、試行錯誤しながらの活動でした。

「今日は、こんな動きを入れてみよう」

「車椅子の方がいたら、これもやってみよう」

など、当日はいつも時間ギリギリまで考えていました。

ヨガが好きだから、体の不自由な方にもヨガを楽しんでもらいたいと思って、自分から申し出て活動しているのですが…

それでもやはり

「これで楽しんでもらえるのかな?」

「本当に必要とされているのかな」

「善意の押し売りになってたらどうしよう」

と、不安や緊張も感じていました。

2年間のボランティアを通して、椅子ヨガを楽しみにしてくださる方が少しずつ増え

「ヨガ、いつも楽しみにしてるよ」

と声をかけてもらえることも次第に増えました。

そんなときは、とてもうれしく思いましたが

順調にいったことばかりではなく、心が冷え切ってしまいそうになった瞬間も一度ありました。

そのボランティアはは、最大30人まで参加できる椅子ヨガのグループレッスンでした。

初回から20人以上が参加してくださり、「自分のヨガを待ってくれている人がいる」ことを感じて緊張の中にも少しほっとした気持ちになれたのですが、いちどだけ「参加者ゼロ」だったことがありました。

ボランティアを始めて半年くらいたった頃です。

その日も、いつものように施設内の広い食堂でひとり、椅子ヨガのための準備をはじめました。

テーブルを食堂の端に移動し、空いた場所に椅子を30脚並べて利用者さんが集まるのを待っていました。

いつもは10分前ごろから少しずつ人が集まります。開始時間になる頃には30脚の椅子の半分以上は埋まるのですが、その日は5分前になっても人が集まる気配はありません。

ちょっと不穏な空気を感じながら椅子の横に立ち、利用者さんが集まるのを待ちましたが、椅子は全部、空っぽのまま

開始時間が過ぎました。

食堂には、施設スタッフの人たちが忙しそうに行き来しており、そのなかで1人、ぽつんと立っているのはちょっと孤独でいたたまれない気持ちでした。

少し離れたところから施設利用者のおばあちゃんが数人、こっちを見ています。

開始時間から5分過ぎました。

空っぽの椅子を見つめながら、横に立って人が来るのを待ちましたが、誰もこないままでした。

頭のなかは真っ白でしたが、気持ちは妙に冷静でした。

時計をもう一度見て「もう帰ろう」と思いました。

30脚の椅子とテーブルを、もとの位置に戻さなければと…と思ったとき、施設利用者の男性の方がひとり、ゆっくり歩いてくるのが見えました。

その方は30脚の椅子のなかの、いちばん真ん中の椅子に腰かけ、背もたれに背中を預けてずり落ちるように座りました。

以前も数回、椅子ヨガに参加してくださった覚えがある方でした。

たぶん病気の後遺症のためだと思いますが、ことばを発することができない方でした。

歩きもふらつきながら、口元は軽く開かれて唾液がおちており、目はうつろな感じだったのを覚えています。

いつもは30人近くが集まりにぎやかな椅子ヨガなのですが、その日の参加者はこの男性の方ひとりだけでした。なぜかはいまでもわかりません。

そのあとのことは断片的にな記憶はありますが、詳しくは覚えていません。

「5分過ぎましたが、はじめましょう」といって、二人でその日の椅子ヨガを始めたような気がします。

途中、遠巻きにそれを見ていた利用者のおばあちゃんたちが、急に椅子から立ち上がって参加してきたことは覚えています。

二人だけの椅子ヨガの空間が少しにぎやかになり、少しだけほっとした気持ちになったことも覚えています。

そのあとのことは覚えていません。

そこから、このことを思い出すことは一度もなかったのですが先日、不意にこの出来事を思い出しました。

今になって思い出してみると、

「あのときの自分、がんばったな。」

と思います。

あの日、たった一人で椅子ヨガに参加してくれたおじいちゃんは、青か緑のベースボールキャップを被っていました。私の話しかける声は届いていたと思いますが、返事はありませんでした。ヨガがおわったら、ふらっと椅子から立ち上がり、行ってしまったような気がします。

もし、もう一度あのおじいちゃんに会えたら「ありがとうございました」と、笑顔でお礼を言いたいのですが☺

でも、本当に会えたら少し泣いてしまうような気もします。

途中で急に参加してくれた、名前も知らないおばあちゃんたちにも「ありがとう」とお礼を言いたいと思っています。

勇気づけてくれて、ありがとうございました。

ちょうど10年前のことです。

いろんなことがあっても、今もヨガをやめずに続けられているのは

案外こんな小さな、忘れそうになっていた思い出のおかげなのかもしれません。

🧢Namasute🧢✨🌸